今日の土曜は今年最初の仕事で午前外来だった。ただ、まだ松の内ということもありさほど忙しくなかった。そんな余裕もあり一人一人やや話が長くなり、その中で莞爾(かんじ)さんという初老の人がいた。生まれ年は昭和19年。ははぁと思い「この名前は軍人さんからでしょう」と尋ねると「そうらしいです」との返事だった。以前書いたが戦中は子に軍人の名前を付けることもあり「五十六」さんも青雲会病院だけで数名いる。「莞爾」は陸軍の石原莞爾から取ったのは間違いないだろう。莞爾とは「莞爾たり=にっこり笑う」の意味で形容動詞でもある。石原は満州事変の策謀者で満州国を立国させた後に東条英機と徹底的に対立し太平洋戦争時は引退に追い込まれた。東京裁判では戦犯から外されたものの実家の山形での臨時法廷(病気療養の石原のためだけに設けられた)に立ち持論を展開している。私は高校のころ東京裁判の本をよく読んでいたのでそんな内容を莞爾さん相手に教えた。へーえと感心し、「この名前は今までまともに呼んでもらえなかったのですがいい話を聞けて良かったです」とにっこり笑ってくれた。私もそこそこ満足したがこの人がどんな病気で何を処方したのか今では全く思い出せないのである。
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